ガソリン車全廃!?

SDGsスローガンについては前回もお話していますが、ここに来て総理が2030年代半ばには
ガソリン車を無くす、都知事に至っては2030年には純ガソリン車の販売禁止を打ち出しておられます。
 
世界の流れ的にその方向だろうから、その先陣を切って・・というおつもりなんでしょうが、
果たしてこれがどういう事態を招くか、ちゃんと理解されているのかと私は不安であります。
 
純ガソリン車ということで、ハイブリッド(HV)車は除外という理解はあるものの、
電気自動車(EV)への移行の促進をそんなに急いでいいのか? という疑念の理由が3つ。
 
一つ目は、CO2排出の観点。
日本の場合、その電気自動車に充電する電気は火力発電所で作っている、ということ。
原発で全電力の約7割を賄っているフランスや、その電気をフランスから多く輸入しているドイツとは
事情が大きく異なります。
日本では、現在は原発はほとんど動いてはおらず、70%ほどを石炭、石油、天然ガスを燃やす
火力発電所で賄っているので、電動化を進めるためには、この電源構成を大きく変えていかないと
意味がない事になります。
 
二つ目は、充電器のインフラの問題。
ハイブリッド車はエンジンがあるので良いとしても、純粋電気自動車(BEV)の場合は、
充電設備が必要で、現状では全く足りていない充電インフラをどう整備するのか、という問題。
私もEVを仕事の足としているのでわかりますが、普通充電器を設置できる一戸建てはともかく、
マンションではまず皆が夜に充電する環境は難しいし、街に出て高速道路に乗っても、
サービスエリアにある急速充電器は台数も少なく、容量も大きくないので、これ以上急速にEVが
増えると充電ステーション大渋滞が予想されます。今でも、SA充電器はリーフで列をなしています。
 
三つ目は、日本の技術的優位性を失う可能性。
日本製内燃エンジンはおしなべて小型、軽量、低燃費、故障しないという点で、
世界エンジン製造メンバーの主力の一角を獲得していていますが、
ここまで来るには、先人たち(私を含む笑)の知恵と努力と苦労の結晶なわけです。
エンジン製造が一筋縄でいかないくらい難しいから、世界で優位性を保ってこられているのに、
全部EVにするというのはこの財産を捨て去る可能性がある。
EVは、エンジンに比べたら圧倒的に簡単なので新興国でも十分作れますから。
日本で長年苦労して築いてきたエンジン製造に関わるネットワークも死んでしまい、
製造業における日本の地位と日本経済は必ず地盤沈下してしまうだろうと思われます。
 
簡単には、以上の3つの理由で私は無闇なEV化推進には疑問があります。
ハイブリッド車は今でも非常に低燃費で日本の財産だと思いますが、これを生かして、
全固体電池などと組み合わせるなどして、ゴリ押しでも日本の強みを生かす方向を
探るべきなんじゃないかと思っています。(世界は皆、ゴリ押しの戦いをしています)
 
発電比率については、太陽光や洋上風車などを急速に増やすし、水素というクリーンエネルギー
で世界をリードするんだ、というつもりもあるのかもしれませんが、
政治家が単に世界の合言葉に乗って「進んだ指導者像」をアピールしたい為だけであるなら、
「ガソリン車全廃」などと軽々しく言ってもらいたくないものであります。

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