テスラとトヨタ

先日、トヨタがテスラの保有株式を全数売却した、との報道があった。

テスラがまだ出来たばかりだった時に、トヨタが45億円ほどの株式を
購入して援助のような、先行投資のようなことをしていたのは知っていたが、
まだ持っていたとは知らなかった。
さもありなん、というか、よく今まで持ってたな、とも思う。

トヨタが出資したのは2010年。7年前で今のように電気自動車が走り回る
前夜のことであった。
おそらくトヨタの章男社長は、次代の主役となるであろう電気自動車の
キーとなり得る会社を握っていたかったのだろうし、ひょっとしたら
飲み込んでしまおうという腹だったんだろうと思う。

ところが、
テスラはトヨタの意向や、やり方を無視してどんどん資金調達して、
どんどん新しい電気自動車を開発して世の中に出していった。
気がつくと、テスラの時価総額は、GMを凌ごうかという勢いになった。
登り竜がトヨタの声など聞くわけがない。

ご存じのように、トヨタの製品群は手堅い。
手堅いどころか、堅すぎて退屈でつまらないに近い。
新技術は石橋を叩いて叩いて、モデル末期の不具合も出尽くしたモデルに
そっと投入して様子を見る。
ちょっと前までは、昔からのユーザーで何かあっても文句を言わないクラウン
に新技術を投入して、様子を見ながらニューモデルに本格的に採用するみたいな
やり方である。
初代プリウスを除けばいつもそうであったし、今でもその傾向はある。

片や、業界風雲児テスラである。
とにかく彼らは自動車なんてスマホと同じだという感覚である。
不具合は、夜中にインストールしてアップデートすれば終わりで、
簡単なもんだ、と思っている(んだ、と思う)。
従来の自動車業界は、アタマが硬くて、やることが遅くて、ムダなコストを
かけてる、と思っている。

こんな両社が、同じ舟に乗れるわけがない(笑)

私は元々自動車業界にいた人間なので、テスラが考えるほど簡単にはいかない、
と実は思っている。イーロン・マスクほど楽観的にはなれない。

自動車を走らせると、考えられない状況に遭遇する(本当に!)
自動車会社は、普通はあり得ないというくらいの想定をしてテストを重ねる。
そして何年かテストを重ねて、自信がついたらようやく市販化する。
会社によって、そのあり得ない想定レベルが若干違うし、自信の持ち方も
若干の差があり、それが各社の小さな個性である。

特に自動運転技術などでは、既存の自動車会社はテスラくらいのことは
既に出来るだろうが、彼らが思う”考えられない状況”をすべてに渡っては
テスト出来てはいないだろう。
おそろしくて簡単に市販化できず、他社はどうするかを見て探っている段階
なのだろうと思う。

・・

大きな技術革新には、おそらくイーロン・マスクのような桁外れの行動力が
必要だと思う。しかし、ひょっとすると彼はその恐ろしさを知らない
だけかもしれない。

恐ろしさを知っていたら出来ないことを、何も知らない”うつけ者”だから
やってしまうというのもあるやもしれん。

トヨタと言えば、日本史上、うつけ者元祖の織田信長の地元である。
現代の世界のうつけ者イーロン・マスクとどう勝負するのか、実に興味深いではないか。

まあそんなんじゃくて、今回のテスラ株売却で1000億円近い利ザヤを稼いだ
トヨタは、やはり、さすがという見方が正しいのもしれないが。。

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